
コクマーはカバラにおける第二番目のセフィロート(天球)です。
セフェール・イェツィラー(形成の書)においては「光を照らす知性」と言われます。
この記事では「コクマー」とは一体何なのか、ご紹介していきたいと思います。
コクマーとは
英語でchokhmahと綴ることから、「チョクマー」と呼ばれることもあります。
非常に概念的な話になりますが、ケテルの反映として生まれるコクマーは、「無」であった世界に2つ目の点としての役割を持ちます。
ケテルだけの時は点が1つあった状態に対し、コクマーが生まれると点と点が繋がって線となります。
静止していた点が、線を作るようになる動きが生じ、世界の創造を推し進めます。
アインソフの無限のエネルギーはケテルにて「点」として静止・限定されていましたが、コクマーにて初めてエネルギーは「線」という方向性を持ちます。
コクマーに割り当てられる象徴的意味は「知恵」です。
カバラの4つの世界においては「創造・ブリアー」の世界に属し、ケテル・ビナーと共に「至高の三角形」を形作る。
コクマーの特徴
元型的な動的パワー
そのため、コクマーは「原初の動かす力」とされています。ケテルから受け取った無限のエネルギーを発散させるようなイメージです。
この状態から、「元型的な陽」「原初の男性原理」「至高の父」とも言われます。
男性や父が動かす力にとされる理由は、命が生まれる過程を考えるとわかります。
男性が動かす力だとしたら、女性は受け止め形にする力です。
もちろん女性側のセフィラーは第三のセフィラー「ビナー」です。
子供が生まれる時、男性は女性に命を”動かす”力を送ります。原動力と言うと分かりやすいかもしれません。
それを受け取った女性は、その力を受け止め命を形にする力で、子宮に命を宿します。
このため、「男性・父」は「動かす力」で、「女性・母」は「受け止め形にする力」を象徴します。
男性は力を与え、女性は形を与えるため、コクマーのある柱は「慈悲の柱」、ビナーのある柱は「峻厳の柱」と呼ばれます。
男性は常に力を与えますが、それをどのように形にするかは女性が鍵を握っていて、形を破壊する選択権も女性の手中にあります。
形を持つということは、形が壊れることも含まれています。肉体という形を持てば、厳しいですがそれに終りもあるのです。
男性性と女性性をもう一歩わかりやすく
男性生と女性性は、水とカップの関係にも似ています。
男性性は水、女性性はカップです。
男性性に出来るのはどれだけの水を注ぐかということ。
女性性に出来るのは、どのような器でどんな形に水を貯めるかということ。
男性性が水を注がなければ、女性性は水を使って形を作ることが出来ません。
反対に、女性性がカップに穴を開けてしまえば、どれだけ男性性が水を注いでも水は形を持てません。
元型的な動的力の例
コクマーの元型的な動的な力は、様々な例に例えられます。
イザナギが国を生むときのシーンもそうですし、旧約聖書の創世記にて「光あれ」という言葉が発せられるところもコクマーの側面を示しています。
ギリシャ神話では最高位の男性神ゼウスが当てはまります。
何らかの動的な動きを見せる時には、既にコクマーの領域に入っているのです。
しかしコクマーはまだ物質的な状態ではないので、動的で原型的な力ではありますが、物質的な豊かさ(アバンダンス)を示しません。
動きのある力を言い換えると、刺激を与える力とも言い換えられます。
クリエイティブな仕事をするにあたっても、その初めの段階は何らかの原型的な動きや刺激があって、初めて仕事に取り掛かります。
岡本太郎の言った言葉「芸術は爆発だ」とは、まさにコクマーの力を象徴しています。芸術そのものは、本能を司る第七セフィラーのネツァクに属しますが、爆発はコクマーに属します。爆発的なパワーという抽象的な動的意識の状態が、次元を落としてより具体的になることで、芸術という動的表現に収まるのです。
こうした活動の初めにある刺激がコクマーに属します。
雄雌を越えた性
例として男女と子供を挙げましたが、生物学的なオスとメスを越えて、性という極性は働いています。
以下に男性性と女性性を表にしてみました。
男性性 | 女性性 |
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オス | メス |
陽 | 陰 |
能動的 | 受動的 |
動かす・刺激する | 受け止め形にする |
アイディア | 現実化する力 |
生 | 死 |
働く力や状態が、男性性側か女性性側にあるかで、生物学的なオス・メスを越えて性が生まれています。
コクマーと対応する様々な概念
コクマーに対応する概念 | |
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神の名前 | ヤー, イェホヴァ |
大天使 | ラツィエル |
称号 | 知恵、至高の父、テトラグラマトンのヨッド |
惑星 | 黄道十二宮・恒星 |
ヘブライ語表記 | ChKMH(ケト カフ メフ ヘー) |
イェホヴァについて
ヘブライ語でIHVHと綴り、本来はこの語の発音は「イェホヴァ」ではなく、正しい秘密の発音があるとされています。
イェホヴァの意味は、ケテルの神名AHIH(エヘイエ)と似ていて「有る」という意味です。
イェホヴァはコクマーの中に含まれているマルクトまでを意味するとされています。
IHVHの文字は置き換えることが出来るとされていて、またAHIHやIHVHなどの4文字の神の名前は「テトラグラマトン」と呼ばれます。
この文字を置き換えると、黄道十二宮の数と同じ12が浮かび上がってきます。
黄道十二宮(ゾディアック)について
IHVHの組み合わせは以下のようになると言われています。
IHVH | IHHV | IVHH | HVHI |
HVIH | HHIV | VHHI | VIHH |
VHIH | HIHV | HIVH | HHVI |
4*3=12になっています。
テトラグラマトンのヨッドについて
IHVH(ヨッド・ヘー・ヴァウ・ヘー)において、I(ヨッド)は天上の父(コクマー)、二番目のH(へー)は天上の母(ビナー)、V(ヴァウ)はミクロプロソプス(ティファレト)、最後のHは花嫁(マルクト)を示すとされています。
つまりテトラグラマトンのI(ヨッド)とは、コクマーのことを指しています。
ラツィエルについて
名前に神の神秘という意味を持つ。
座天使の長で七大天使の1人。