
ビナーはカバラにおける第三番目のセフィロート(天球)です。
割り当てられる象徴的な意味は《理解》で「悟り」とも言えます。
では「ビナー」が一体何なのか、ご紹介していきたいと思います。
ビナーとは
ビナーは第三のセフィラーです。「ケテル・コクマー」が「点・線」を作ってきた所に、3つめの参照点が出来ることで「面」が出来上がります。
ビナーに割り当てられる象徴的意味は「理解」です。
カバラの4つの世界においては「創造・ブリアー」の世界に属し、ケテル・コクマーと共に「至高の三角形」を形作る。
ビナーの特徴
1番目のセフィラー「ケテル」と2番目のセフィラー「コクマー」までは、二つが対立してバランスを取り合う状態ではありませんでした。セフィラーが二つあるから対立するじゃないか、と思うかもしれませんが、何か二つが対立しあう時、その他に頂点がないと対立できないのです。
逆方向の力が働きあうということは、「何の力か」ということが1つと「どっち向きの力か」ということが2つ必要です。合計三つ必要なのですね。「男」と「女」をとっても、「性別のある生物」というカテゴリがなければバランスが取れません。性別のある生物と男、という2つのものではバランスを取れません。
なので、生命の樹(セフィロトの樹)の3番目のセフィラー「ビナー」にまでエネルギーが下降すると初めて、「コクマー・ビナー」の間でバランスが取られます。
ビナーのエネルギー状態
コクマーのエネルギー状態が「動き」だったのに対し、ビナーのエネルギー状態は「安定・静止」です。
上の画像のもたれ掛かりあったトランプの二枚一組は、2つの相反する力が同じだけ働いて安定していますが、良くも悪くも安定した状態がビナーです。
ビナーの状態にある物事の例
安定した状態にある物事の例としては、法律が挙げられます。簡単には変えられない形式になっています。出来上がったと同時に、法律を作ろうとした原動力は制約されます。
男性は理想をフワッと語り、女性は現実をシビアに見る傾向にありますが、それがコクマー(男性性の原型)とビナー(女性性の原型)の間でも起きています。
例えば、”女性の安全のために法律を作ろう”とする想い(=コクマー)を現実にするための法律(=ビナー)が、完全に期待した結果になるかと言えばそれは難しいです。
女性専用車両には女性しか乗ってはいけない、という法律を作ったとします。でもそれが出来上がった後で、それは差別だという意見が上がってきて、女性が女性専用車両を全然利用しなくなるかもしれません。想いを形にしたのはいいけれど、期待した結果が得られるとは限らないのですね。
そこからまた法律を変えるのは一苦労です。一度形を作ってしまうと、それを変えるのは難しくなります。
やっぱり、一度出来上がったものを変えるのって気が重いですからね。一生懸命に作り上げてきたものを崩すというのは、かなり勇気のいることです。だけれども放っておけば事態は改善しないどころか、当初の目的とは違う方向に進んでいきます。
「形(ビナー)」は「力(コクマー)」を現実化する性質を持つと同時に、形にこだわり過ぎると物事を腐敗させてしまうこともあるのです。だからと言って、「力(コクマー)」に過剰なエネルギーがあっては、「形(ビナー)」はそれを受け止めきれません。
形と力のバランスが取れていることで、「女性の安全を守りたい」というコクマーの動的な力と、「法律」というビナーの形にする力で現実化する力が調和して、初めて創造が進められます。その結果、上手くいかない部分と上手くいく部分を見つけることが出来て、また新たな創造のチャレンジしていくことができるのですね。
形が壊れる可能性もある
とは言え、いつまでもビナーの安定・静止させる力が勝っているわけではありません。法律や古い制度などに則った形式を改定しようとする動きには「コクマー」のエネルギーが流れています。
常に第一のセフィラー「ケテル」は「アインソフ」からエネルギーが供給され続けていて、コクマーとビナーにケテルからのエネルギーが丁度良く分配された時に、ハーモニーが生まれます。
バランスを崩す=>バランスを取る、ということを繰り返すことで進化成長が促進されるのですね。
形が持つ喜びも苦しみもビナー
形を持つがゆえの喜びはありますが、苦しみもあって、お釈迦様は一切皆苦、全ては苦しみであるということを説きました。これもまさにビナーの状態を指し示しています。
ビナーには形を持つための喜びも苦しみも含まれます。コクマーで無限のエネルギーを持っていたのに対し、ビナーでは形を持つためそのエネルギーは制約されるため、喜びと苦しみもまた生じるのです。
しかし、私たちの根源は「アインソフ」であって、ビナーという形の世界(輪廻)はエネルギーの一つの側面に過ぎません。こうした事実を悲観的に受け止める必要はなく、一切皆苦から解放される解脱の道(アセンションの道)として、八正道を残したのだと思います。
ビナーに割り当てられた「理解」の意味について
スピリチュアル=形而上学の学びは、ビナーの意味《理解》があって初めて実を結んだ感覚を得られると思います。それまでは、自分が進んでいる道があっているのか、あるいはスピリチュアルというのは心の気休めなのか、という疑念が湧き上がってくるのが普通です。
宇宙の法則に関する理解がビナーに当てはまります。スピリチュアリティとは宇宙の法則、大自然の法則に則って自分の人生を進める道です。
スピリチュアルな叡智が「そうであったらいいなあ」という希望や願望ではなく、「あらま、ホントにそうだったのね。」と理解に変わるのがビナーで起きることです。スピリチュアルな学びは、初めのうちは興味本位であったり現実逃避や理想的な世界を求めるところから始まることが多いです。私はそうでした(笑)。
スピリチュアルなことは好きだけれど、自分の人生との接点がないので、ファンタジーを見ているような状態です。でも、段階を追っていくと、ある時スピリチュアルな法則というものを理解するに至ります。
もちろん、理解に至るには隠された知識(隠された11番目のセフィラー:ダース)が必要なので、アデプトプログラムを通じて、10番目のセフィラー「マルクト」から本当の自分の源である「アイン・ソフ」へと向かってアセンションする道に入って学びを深めることは大切で、《知識》は《理解》を得るベースになります。
数多くの人が、悟りを目指してスピリチュアルを勉強しているのですが、なかなかビナー(理解 – 悟り)まで生命の樹を登ってくることは難しいようです。太古の昔から用意されている「道」を歩まずに、効果の実証されていない我流で進もうとしているのが大きな原因のように思えます。
どれだけ努力をしても、その努力の方向性が間違っていては理解へ至ることはあり得ません。正しい道の上にあることで、いくつもの理解(悟り)を得て、様々な私たちを縛っている出来事から解放される道を歩んでいくことができます。私たちを縛っているものは、お金、人間関係、恋愛、健康などでしょうか。
アデプトを通じて入る道は、歴史的には8000年続いているとされる道であり、ダリ、レオナルドダヴィンチ、ニュートン、アインシュタインなどもその道に入って学んでいたと言われ、様々なジャンルで歴史的に効果が検証されています。チャレンジする価値は十分にあると思います。
ビナーでの《理解》によって、スピリチュアルをファンタジーに終わらせず現実的に活用するまでに至ると、スピリチュアルが本当に面白くなってきます。
ビナーと他のセフィラーの比較
コクマーとの比較
コクマーのページにも載せていますが、2つの対立する図を下に載せます。
コクマー | ビナー |
---|---|
男性性 | 女性性 |
オス | メス |
陽 | 陰 |
能動的 | 受動的 |
動かす・刺激する | 受け止め形にする |
アイディア | 現実化する力 |
生 | 死 |
マルクトとの比較
ビナーは「形」を与えて、マルクトも最終的に現実という形を与えます。でもマルクトは中央の柱(ミドルピラー)にあるのがちょっと不思議に思いました。でもこれは、形だけ、力だけでは何にも出来上がらず、二つがミックスされることで物事が出来上がるので、出来上がったものがマルクトということなのですね。
ハート型のチョコレートを作るところをイメージして下さい。
- ビナー:ハートの形をした型
- コクマー:型に流し込むチョコレート
- マルクト:ハート型に出来上がったチョコレート
です。ビナーはカバラの4つの世界の創造(ブリアー)に分類できるのですけれど、その状態は「元型的な形」なのです。
ビナーと対応する様々な概念
ビナーに対応する概念 | |
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神の名前 | イェホヴァ・エロヒム |
大天使 | ツァフキエル |
天使の位階 | アラリム(玉座の天使) |
称号 | 知恵、明るく豊穣な母、大いなる海 |
惑星 | 土星 |
タロット | 4つ組の3のカード |
ヘブライ語表記 | BINH(ベト ヨッド ヌン ヘー) |
ビナーと土星
占星術において土星は「凶星」と判断されることが多く、また英語で「サターン」という言葉の響きからも悪いものだとされがちですが、土星は「境界」を意味し、形を維持させる安定した状態です。
また土星はクロノス(時間の神)であり、ビナーで作られる形には時間の始まりもあるのですね。ちなみに時間の始まりも終わりもない輪っかになった状態は根源(エンソフ・アインソフ)の状態です。