ネツァク
ネツァク
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ネツァクはカバラにおける第七番目のセフィロート(天球)。

この記事では「ネツァク」とは一体何なのか、ご紹介していきたいと思います。

上から下に進めていくと、一つ前の第6セフィラー「ティファレト」を皮切りに、「ネツァク」からは五感で捉えられる世界に入っていきます。

ネツァクとは

まずは基本的な知識の紹介から。ネツァクは第七のセフィラーと言われ、セフィロトの樹での配置はちょうど画像の緑色になっているところ。割り当てられる象徴的な意味は「勝利」(なぜ勝利なのかは後ほど)。

カバラの”4つの世界”においては「形成・イェツィラー」の世界に属し、ホド(ネツァクの右)・イェソド(ネツァクの右下)と作られる三角形は「アストラル・トライアングル」と呼ばれています。

ネツァクの特徴

コクマービナー(一番上の左右一組)」・「ゲブラーケセド(真ん中の左右一組)」が2つで1セットであったように、ネツァクはホドと2つ一組です。

ネツァクの管理する意識状態

ネツァクの管理する意識状態は「本能」です。芸術を見て沸き立つ思い、仕事への情熱、愛したいと思いなど。

直観や意志よりも現実的なことにかかわりを持っています。車作りで例えると、「直観」や「意志」が経営者だとすると、「本能」は車を作るエンジニアなどです。現場に近いのですね。

ちなみに西洋占星術でいうとネツァクには「金星・ヴィーナス」が割り当てられます。

ネツァクの象徴的意味:勝利

西洋占星術では金星が割り当てられているネツァク。ロマンティックでラブラブな雰囲気ですけれど、それだけでなく、「勝利」という意味もあるのです。

「勝利」は、ネツァクの2つ前の第五セフィラー「ゲブラー」の「破壊」を引き継いだような意味で、「勝利」というと「火星=ゲブラー」っぽい印象を受けますが、この意味はネツァクに割り当てられた惑星の金星からではなく、生命の樹の配置から発生しています。

ネツァクに「勝利」という意味があるのは、ティファレトを境界として、ゲブラーからネツァクに入った時の状況に注目する見方もあります。

「ゲブラー・チェセド・ティファレト」の3つ組までは、カバラの4つの世界で言えば「創造(ブリアー)の世界」で、元型的でオリジナルな自分を理解する段階です。ここまでは自分のコンディションを整えているわけです。

しかし、ネツァクに入ると、「ネツァク・ホド・イェソド」の3つ組は「形成(イェツィラー)の世界」であり、理解したオリジナルな自分を表現するプロセスに入っています。

ネツァクの前までは自分自身を理解するという、内側で起こるプロセスであったのに対し、ネツァク以降は自分自身を表現するという、外側で起こるプロセスに移行しています。

多くの人が自分を理解せず、他人の敷いたレールの上を歩いているのに対し、自分でレールを敷いて、自分の人生を歩み始めるターニングポイントがネツァクで現れるので、「勝利」という象徴的な意味が浮かび上がるのです。

こうした表現は、人間の本能と繋がっていて、本能的に突き動かされる感覚を感じる時、ネツァクの領域のエネルギーが動いているのを感じます。情熱が沸き立つときです。

金星という芸術面での勝利

水星が科学の星なら、金星は芸術の星とされています。芸術というと絵画や書道というものをイメージするかもしれませんが、金星が司るのはクリエイティブな活動の全て。これがネツァクに属します。

クリエイティブな活動とそうでない活動を分けるのは、今までの概念を打ち破る新しいものを生み出しているか、それとも今あるものを真似して続けているかというところ。

自然の法則に従うのなら、宇宙が常に拡大を続けているように、人間も常識や既存の概念を打ち破って新しいコンセプト・新しいサービス・新しい技術などを生み出して進化・成長し続けることになります。

なので、芸術家だけでなく、科学者も起業家も、クリエイティブな活動をする人は全員、ネツァクのエネルギーを使っているのですね。

ネツァクのエネルギーを使うと、今までにない独創性が表現され始めます。宇宙の流れに沿って現実が形成されていくので、「勝利」という意味になってくるわけです。

創造的な活動をした人なら、それを達成したときの「勝利」した感覚が分かるかもしれません。勝利したときには、金星が象徴する”喜び”がやってきます。

性愛面

“勝利”に必要なインスピレーションを得るために、神聖娼婦と言われる女性と儀式的に性エネルギーが活用されることもありました。フランスでは王侯貴族を相手にするクルチザンヌや、古代メソポタミアや日本の巫女など。中国では房中術が発展したり、インドではカーマスートラという愛に関する本があったり、ヒンドゥー教ではタントラといって、性力を利用するものもありました。

また、シュメールにおいては女神イシュタルは性愛も司る女神であったり、セクシャルなエネルギーがインスピレーションを得るためによく用いられています。

不思議なのは、愛・性愛を司る男神が見当たらないこと。イシュタル、イナンナ、ウェヌス、ヴィーナス、アフロディーテ、ハトホル、フレイヤなど女神ばかりです。人間はみんな女性から生まれますし、現実世界で何かを与えるのは女性で、それを形にするためのパワーの供給者が男性なのかもしれません。

ただ、パートナーとの間でタントラなどのセクシャル・エネルギーを意識して愛を交わすと、物質的な欲望に偏りがちなので、すごくコントロールが難しいので、注意が必要なところ。

本やブログで勉強するのではなく、熟練した人から直接この種のエネルギーを扱う事を伝授されない限り、単純に愛を交わすのを楽しんだ方が良いです。

勝利ではない状況は?

それは、誰かに感化されて望んでいる成功のイメージに向かって、自分のエネルギーを注いでいるときでしょう。

巷では、「時間」と「お金」から自由になろうとするあまり、不本意なことにチャレンジする方は少なくありませんが、そうして到達できるのは人を真似した二番煎じの結果です。閃きやインスピレーションに感じる美が感じられないのですね。

他の誰に媚びたり、真似ることなく、地球での使命とも繋がる本来の《意志》を貫くことで、勝利は得られるものです。初志貫徹という言葉がありますが、初志=ケテルでの善なる意志を貫くということです。

今までになかったアイディアで身の回りの人を感動させたり、気づきを促すなどが起きてくると思います。

スティーブ・ジョブズがiPhoneを発明したり、西勝造が西式健康法を世に広めたりといった革新的な発見は、他の誰かを真似ただけでは起こり得なかったことです。

“道”を極めた人である宮本武蔵は、60歳になってしたためた書籍にて、以下のように言っています。

この書だけを見て、兵法の真髄に到達することはできない。この書にしたためたものを、自分にとっての書付と心得て、見るのだと思わず、習うのだと思わず、物真似をするのではなく、自分の心から見つけた利でもって、自分ごととしてよく工夫すべし。
(宮本武蔵著 『五輪書』 – 水之巻 冒頭より)

ネツァクと他のセフィラーとの比較

次元ごとに入れ替わる力と形のセフィロト

カバラの世界では、2つの対立する「力と形」のセフィロート均衡をすると一つのセフィロートが生まれる、という流れになっています。

例えば、「倫理的三角形」では、ケセドとゲブラーが均衡を取るとティファレトが生まれます。

三位一体と言われたりする関係です。

ただ、「至高の三角形」、「倫理的三角形」、「アストラル・トライアングル」のそれぞれで、二項対立する力は次元を一つ落とすごとに、生命の樹における配置が入れ替わります。

生命の樹を図にするとこのようになります。

中央
1:ケテル
2:コクマー( 3:ビナー(
4:ケセド( 5:ゲブラー(
6:ティファレト
7:ネツァク( 8:ホド(

左右の「力と形」はジグザグに入れ替わっています。次元を落とすと、左右が入れ替わるという特徴があります。

ネツァクと他のセフィラーを繋ぐパス(小径)

マルクトと結ぶパス:29番

29番目のパスに対応する概念
ヘブライ文字 Quoph(ק)
占星術のシンボル うお座(♓)
タロットカード 18:The Moon

イエソドと結ぶパス:28番

28番目のパスに対応する概念
ヘブライ文字 Tzaddi(צ)
占星術のシンボル みずがめ座(♒)
タロットカード 4:The Emperor

ホドと結ぶパス:27番

27番目のパスに対応する概念
ヘブライ文字 Peh(פ)
占星術のシンボル 火星(♂)
タロットカード 16:The Tower

ティファレトと結ぶパス:24番

24番目のパスに対応する概念
ヘブライ文字 Nun(נ)
占星術のシンボル さそり座(♏)
タロットカード 13:The Death

ケセドと結ぶパス:21番

21番目のパスに対応する概念
ヘブライ文字 Kaph(כ)
占星術のシンボル 木星(♃)
タロットカード 10:The Wheel of Fortune

ネツァクに対応する様々な概念

ネツァクに対応する概念
神の名前 イェホヴァ・ツァバオト
大天使 ハニエル
天使の位階 エロヒム
称号 勝利
惑星 金星
タロット 4つ組の7のカード
ヘブライ語表記 NTzCh(ヌン ツァダイ ケト)

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